前編からの続きです。アイレット中綴じの製本工場、株式会社ウキマさんの内部を見学させていただきます。
あ、時間のない方は、動画で90秒でどうぞ。工場の音っていいですよねぇ。
ウキマさんは印刷工場ではありませんので、印刷物はよその工場さんからやっていきます。
まず、こういう機械があるのを初めて知りました。印刷物をきれいに揃える台です。きちんと揃っていないと、断裁がズレますからね。
断裁?裁断?どっちでしょうか。ウィキペディアで調べてみました。
断裁:1.印刷・製本の加工工程の一つで、印刷された紙や白紙を断裁機で切る作業のこと。2.出版流通の過程で取次から返品された本や雑誌を廃棄処分すること。断裁処理。3.不要な書類などを切断して破棄すること。近年はプライバシー保護や情報漏洩防止のため、シュレッダーなどでより細かく破砕することから細断という表現を使う場合がある。
裁断:1.型に合わせて布・紙・皮革などを切ること。印刷・製本の加工工程の一つで、印刷物や用紙を裁断機(断裁機)で切る作業のことも裁断と呼ばれるが、この場合の同義語に「断裁」がある。 2.理非、善悪を判断して決めること。
うーん、断裁のほうがより印刷出版に近い感じですね。ここでは断裁でいきます。
台の上にポコポコと穴が開いているのが見えますでしょうか?ここから空気が吹き出して、印刷物を動かしやすくしています。まとまった紙って、まぁとにかく重いですからね。華麗な手捌きで揃えられた印刷物は、奥へ運ばれていきます。
お分かりになりますでしょうか?機械が奥のほうへ傾いて斜めになりました。重力も活用して紙を揃えていきます。
運ばれた先には、立派な断裁機が。
怖い話を書いてアレですが、昔は指を落としてしまう職人さん、多かったそうです。今でもセンサーのしっかりしていない機械は危険だということで、ウキマさんでは安全設計のしっかりした欧米の機械のみとなっているそうです。
次に見せていただいたのは折りの機械です。
市販されている卓上折り機と違い、精度も速さも段違いですが、やはりそこには職人さんの技があるわけです。コンマ何ミリの調整をして、初めて紙が通ります。
わたくし社長の講義をお聴きするまで、全然イメージになかったのですが、製本のキモは折りなんだなと。すごい折り機がたくさんあります。
折りだけの仕事もあるようで、これなんかはレンズのタムロンさんのでっかい説明書を、5回とか6回折ってコンパクトにします。
こんなに小さくなっちゃった。キレイに折るのって難しいんですよね。最初に折ってあったように折らないと、ちゃんと戻らかったりする。(^^ゞ
自動で何回も折っていくには、何台も連結された機械を通って行くことになります。どんどん機械をつなげていくと、すごいスペースが必要になるんですね。B紙の大きさまで折れるそうです。すごいですね。イメージでけへん。
さて、いよいよ丁合いです。その最後には中綴じの機械が控えています。順番に揃えて、ガチャンと綴る工程です。
丁合い:製本工程で、折った印刷物をページの順に1ページから最終ページまで揃え、一冊分にまとめる作業。
前編での、16ページ分の折りを覚えておられますでしょうか?ここでは機械が8連になっていますので、例えば16ページ折りにした場合、最大16×8=128ページまでの冊子が丁合いできるということですね。
上にある四角い箱はセンサーで、間違ったものが混ざったらそれを弾いてくれる様になっているそうです。
そして最後に控えているのが、ウキマさんの最終兵器、中綴じ機です。最初に書きましたが、でっかいホチキスで止めているんじゃないんですね。上から二本の連続した針金が供給されて、必要な分だけ切って綴る仕組みになっています。
その最終工程のアタッチメントで、普通の中綴じか、アイレット中綴じかどちらかになります。(ウキマさんにはもちろん普通の中綴じ機もあります)
機械の上にある針金。シルバーはもとより、真鍮色や各種メタリックカラーがあります。
車のエンジンルームを覗いているようです。
ガッチャンコする部分。
下の、ウロコみたいな部分が山になっていまして、丁合いされた印刷物がうつ伏せ状態で運ばれてきて、上からガシャンです。
複雑すぎて速すぎて見えないのですが、だいたい理解しました。
この機械もそこかしこに。何の機械でしょうか?
答えはこれ。ビニール紐で梱包するものでした。
これは?
紙のテープでまとめる機械です。裏側に熱で溶ける溶剤が施してあり、圧着します。印刷物の仕上がりに巻いてある紙、これだったんですね。
ガムテープディスペンサー。好きな長さを設定しておくと、きっちり切ってくれます。プロの道具ですなー。
そんなウキマさんが、文具業界に問うているのが、こちらのファイレット。「ファイル」+「アイレット」=「ファイレット」です。
見開きのポケットファイルを、アイレット製本したもの。真ん中の紙は、強度保持にどうしても必要なものです。この部分は一見邪魔なわけですが、それを逆手にとって何か良い機能を持たせられるといいですよね。これからどんどん進化していきます。
こうしてパンフレットなどを差し込めば、穴を開けて綴じずに、本のようにめくって見ることができます。
アイレットが2穴ファイルの幅で綴じられていますので、サクッとファイリングしておけます。
これ、先日うちのAKBオタクの名入れペンネット店長に一冊あげたのですが、「これ、珠理奈の雑誌の切り抜きとかポンポン放り込んでファイルしておくのにめっちゃ便利です!」って言ってました。なるほど、その用途は思いつきませんでしたね。おもしろい。
ということは、ファイレットも見開き2面だけでなく、2冊重ねて4ポケット、3冊重ねて6ポケットヴァージョンなど、ポケット用途で展開ができそうですよね。名前は「ポケレット」になるのかな?もっと他に変形のファイルも挟めるんじゃないか?いろいろ妄想が楽しいです。
東急ハンズなどでも取り扱いが始まったそうですよー。
あ、そいでもってこれです。これの相談もあってみんなで今回伺ったんですね。
ウキマさんがノベルティとして作った、Tシャツ型のアイレットメモ帳です。トムソンの型はすでにあるし、何か乗っかって作れるよーって社長がおっしゃったので、文具仲間のみなさん興味津々です。
今までこんなカラーラインナップで作られています。
以前、スワローズのノベルティでも採用されたそうです。
おー、中身もこのように。いいですね~。(表紙、中身合計で3mmくらいまで中綴じできるそうです。)
確かにTシャツの型は便利ですね。いろいろ使いやすいです。でも、トムソンの型って思ったより全然安い(大きさや形にもよりますが、数万円だそうです。)ので、オリジナルのアイレットメモ帳やノート類も全然いけるなぁと。
というわけで、みんな妄想で頭の中いっぱいになりながら、工場をあとにしたのでした。ウキマの樋下田社長、職人のみなさん、ありがとうございました!