【製本工場/株式会社ウキマ】あのファイレットの工場へ見学にいってきた!(前編)

ウキマ樋下田社長

突然ですが、あなたは「中綴じ製本」という言葉をご存知でしょうか?聞いたことはあるけど、意味があやふやという方が多いかもですね。

これのことです。

中とじ製本の例

よくパンフレットやノートなどを綴るときに、主にホチキス2箇所で止めてあるように見える方法ですね。実はわたくしも今回初めてこれがホチキスでなく連続した針金を切ったものだということを知ったのですが、厚さ3ミリ(最大でも5ミリくらいでしょうか)くらいまでの製本に向いているとされています。

製本方法には、その他に糸かがり製本(上製本)や、糸や針金を使わない無線綴じがありますね。無線綴じは、今どきの出版物の中心的製本方法で、背の部分を高温の合成のりで綴じ、表紙でくるむやり方です。

今回お邪魔しましたのは、中綴じ製本の工場、株式会社ウキマさんです。

綴じ工程だけでなく、裁断から折りの機械もばっちり揃っています。印刷~製本の業界は、製紙工場から始まって、いろんな工場さんがどういった機械を持っているかによって、大手で全部自社でできるところから、部分的に外注に出したり、単一工程のみを請け負うなど、それぞれの立場で関わっているわけですね。

アイレット中綴じ製本(めがね製本)

ウキマさんの特長のひとつは、この「アイレット中綴じ」ができることです。めがね製本とも呼ばれ、中綴じ製本の一種です。綴る針金がループになっており、カレンダーのように壁にかけるフックの穴になったり、2穴ファイルの幅で二箇所閉じれば、そのままファイリングできるパンフレットやノートが作れます。

この時点でなんだかワクワクしてきちゃった方、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

株式会社ウキマ

さて、今回ウキマさんにお邪魔したのも、文具朝活会がきっかけでした。社長の樋下田さんが、数ヶ月前から何度か参加してくださって、おもしろい製品をいろいろ見せていただく中で、「では一度みんなで工場見学お願いします!」という流れになったわけですね。

製本工場の工場見学

まずは食堂に通していただき、座学から。

紙が大きすぎて顔が隠れちゃっている樋下田社長が広げているのが、お分かりでしょうか?8面に折られた印刷物です。これで裏表16ページ分になりますね。

恥ずかしながらわたくし知らなかったのですが、製本過程で例えば見開き二つ折りの4ページのものをどんどん重ねていくことは、印刷の回数も増えてしまうし、重ねる際に抜けたり順番を間違うリスクも発生します。しかし、このように16ページ分印刷して折りたたむことで、印刷は一回で済むし、その16ページは完全に固定されるので、すなわち効率がよくなるわけです。

そういえば、以前本を書かせていただいたときに、編集者さんに「本って16の倍数ページで作るので、現状4ページ足りないんです。」と言われ、慌てて原稿を足したことを思い出しました。無線綴じの本でも、事情は同じなんですね。

ミシン目

紙を折ると、当然折った部分が厚くなり、特に角の部分が袋状になりますね。それですと、その分しわ寄せがきて、折り・揃えの精度が下がります。

そこで、折り線の部分にはミシン目が入り、空気を逃がすようにするのだそうです。

製本の折りのミシン目

結果、パキッと折れてる!これでページの印刷がピシっと揃います。すばらしいですね。

こんな知識って、知らなくても生きていけることですが、なんかうれしい。(笑)

三角紙の折りたたみ

続いて、これまでのおもしろい加工事例を、いろいろと見せていただきます。

なんだこれ。普通のパンフに見えますが。

広げると三角になるパンフ

一回広げると、斜めの切れ込みが。どうなっているんだろう。

広げると三角形になるパンフレット

わ、全部広げたら三角形になりました。

デザインも大変ですが、加工も大変そうです。裁断、折りの精度が完璧でないと成り立ちません。ウキマさんは、製本工場さんですが、その過程でどうしても必要になってくる折り加工についてもスペシャリストで、こうした「難問」も、長年の経験、知恵と工夫でなんとかやっちゃう。

職人の世界ですね。

ウキマ樋下田社長

こちらが樋下田社長。常にチャレンジし続ける町工場の親父さんです。こういう方たちがジャパンクオリティを支えているのだと思うと、尊敬の眼差しが( ♥ᴗ♥ )になっちゃいます。

丸い裁断&アイレット中綴じ

丸くくり抜いた型に、アイレット中綴じ。

丸いアイレットノート

壁掛けの、丸いノートができますね。

トムソン型抜き

当然、こういうのもお手の物ということになりますね。

開くとこうなる

こんなのもあります。

真ん中揃えの中綴じ

かまぼこ型のパンフレット。開くと、、、

真ん中揃えの中綴じ

何気なく見えますが、表紙と中の紙、真ん中揃えで中綴じするのって難しいのだそうです。確かに、端っこで揃えるのは想像できますが、真ん中で中の紙が浮いている状態でどうやって揃えるのか?素人でもその難しさはイメージできます。

真ん中揃えの中綴じカレンダー

そういえば、以前いただいた今年のカレンダーも、中身の部分は真ん中揃えになっていたなと思い出しました。ノベルティでも、さりげなく自社の技術をアピールされていたんですねー。

複雑な製本

これまた複雑な製本。表紙だけ形が違うとか、こんなのも揃えにくかったりするのでしょうが、見事にクリアです。

複雑な中綴じ製本技術

ところで、こういった型抜きについても今回初めて見せていただいたものがあります。トムソン加工の型です。

トムソン型

木型に、溝にそって折り曲げられた刃が埋め込まれています。(オレンジのは、刃がむき出しだと危ないのでスポンジで保護しているものです。)

これで抜いたものが青いTシャツのメモ帳になります。

わたくし、こういったものは何十枚も一気に抜くのかと思っていましたが、それはもっと大きな金型のお話(一回に500枚~1,000枚抜いちゃうような)で、トムソンでは一枚ずつなのだそうです。大変だ。

しかし、トムソンは型代が安く、型自体もクイックに作れるので、少量生産には非常に向いているのだそうです。最近はCAD技術の発達で、かなり細かな柄もできるようになっているそうです。

ちなみにトムソン型の刃は30万枚ほど抜ける寿命があるそうです。

ハート型のトムソン

例えばこんなパンフ。

ハート型のトムソン

ロングヘアー時代の剛力ちゃん!(・∀・)

ハートの鋭角部分のトムソン

こんな鋭角の部分、トムソンの刃の曲げ加工が大変そうですが、今ではこれくらいは余裕でできちゃうとのこと。

パンフの工夫

この映画のパンフでは、またちょっとした工夫が。

1ページだけミシン目

映画のロケ地めぐりみたいなページで、このページだけ切り離して持ち歩けるように、ミシン目入れちゃったそうです。実際には勿体無くて切り離す人はいないと思いますが、こういったギミックというか楽しい仕掛けがあるだけで、気分が上がりますよね。

ものづくりをする上で、こういう提案までしてくれる工場さん、職人さんって何とも頼り甲斐があって、かっこいいものです。

さて、社長の講義はここまでで、続いて工場の中をご案内いただきました。(後編に続く)