【ぺんてる/orenznero(オレンズネロ)】折れない、極細、自動芯出し、マットブラック。オレンズシリーズの最高峰モデルをレポート!(後編)

中編からつづく)

「orenznero(オレンズネロ)」の目玉的な新機能が、自動芯出し機能です。会場に、『走れメロス』全文を、ノック一回しただけで、原稿用紙26枚に書ききった展示がありましたが、その文字数なんと1万。

ちょうど芯一本で書ける上限がそのあたりのようですが、ひたすら書くことに集中できるというのは、わたくしが受験生のときに使っていた、昔の100円のシャーペンからするとものすごいことですね。あれは芯は折れるし詰まるし酷かった。(;´Д`A

ワンノックで書き続けられるシャープペンシル。

難しい機構のことはよくわかりませんが、昔、自動制御で製図を引いていたプロッター向けの自動芯出し技術というのがあるそうです。

プロッター

プロッターって、こういうやつですね。(この写真は昔のものではなく、neroを搭載しています。)

自動で製図図面を引く!

文字の書き順はめっちゃくちゃですが、二度書きしたりして確実で美しい筆記をしていきます。

プロッターで書いた文字

ボールチャック機構というのだそうですが、これ自体は以前から極細(0.2や0.3)のプロッターの自動芯出しに使われていた!

安孫子さんがそれを「orenznero(オレンズネロ)」の試作時に盛り込んでみたところ、機械向けとは筆圧などが違うので、人が感じる「書き心地」としてはよくなかったと。そこからの微調整を繰り返し、ついに「折れない、極細、ワンノックで書き続けられる究極のシャープペンシル」が誕生したわけですね。

プロッターになった「orenznero(オレンズネロ)」の動画も撮りましたので、よろしければご覧ください。

ちなみに、普通のシャープの部品数は10個ほど。

普通のシャーペンの部品数

これに対して、「orenznero(オレンズネロ)」は、0.2と0.3で少し異なるようですが、30弱。どれほど緻密なのかと思いますが、逆にたったこれだけの部品であれだけ複雑なからくりを動かせることにも驚きです。

これらの精密部品を手で組み立てていく。だから大量生産ができません。(確か月産3,000本程度とおっしゃってました。)今回も全国で600店舗ほどの限定販売だそうです。

orenzneroの部品数

ぺんてる伝統のシャープペンシルデザイン。

それは、マットな黒を基調とした、12角形で細身なシャープペンシル。

1970年に発売開始、いまも海外では定番のシャープP205や、1986年発売のグラフ1000、1987年のスマッシュをご存知の方なら、ピンとくるのではないでしょうか。

「orenznero(オレンズネロ)」は、デザインの面でも、ぺんてるのシャープペンシルの集大成的な存在というわけです。

12角形の美しいグリップ

このグリップ、最高です。12角形の中に円柱が残されているというか、刻み込まれている感じになっていて、整然とした形状のはずなのに、不思議なゆらぎを感じます。

もちろんグリップ性も抜群。「ちょうどいい」です。

orenzneroお尻から

小さめのクリップもぺんてるの製図系シャープペンシルの伝統的なデザインですね。

orenzneroの重心

ボディの素材も初めての触感。

バランスはご覧のようにペン先に寄っています。細身でコンパクトなボディですが、心地よい適度な重みを感じます。

「orenznero(オレンズネロ)」は、素材も新開発で、確かナイロンと鉄を配合したとおっしゃってました。詳しい方にお聞きしたら、フリーブレンド工法(FBI)という、樹脂にいろんなものを混ぜ込めるやり方ではないかと。鉄粉を入れれば重みが出るように、素材の特性を盛り込みながら、質感を作り上げることができるのだそうです。(違っていたらごめんなさい)

確かに、「orenznero(オレンズネロ)」の質感は、基本的には硬いのに、どこか優しい触感が残ります。何とも言えず不思議なタッチなのです。

オレンズネロの消しゴム

大人の男の道具。ですが、、、

先にも書きましたが、この「orenznero(オレンズネロ)」は作り手が作りたいものを作って、その思いに共感する人だけが買ってくれればいいという商品。

クールな見た目も、そしてこだわりぬいた内部の機構も、完全に大人の男が好きになる世界観を貫いていますが、その芯径は0.2と0.3で、細かい字を書きたい女子の大好きなゾーンという、わたくしからするとこれは矛盾しているのではと思えるほどのニッチとインパクトを持っています。

これが、カメラをはじめとする道具類、またデジタルガジェット好きな大人あたりにバカ売れしたら、文具業界人としてはめっちゃ嬉しいのですが、その反面、なかなか売れなくて「やっぱこれはわかる人にしかわかんないんだよねぇ。」と、オーナー同士で楽しくぼやき合うのも悪くないと思ってしまう、そんな逸品だなぁというのが、現在のわたくしの正直な感想です。

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